第16回 くすのき建築文化賞コンクール

くすのき文化賞ご挨拶

 正会員、賛助会員の皆様におかれましては、常日頃より当協会の事業運営にひとかたならぬご協力並びにご支援を賜り心より感謝申し上げます。
 平成2年(1990年)9月神戸に於いて開催され「われわれは、よいまちづくりを通して地域社会の発展に寄与するため、建築士事務所の経営基盤の強化と、智質の向上をより重ねると共にその責任を明確にし、地域社会が求める優れた建築文化の創造に向かって最大の努力をすることを宣言する。」との大会宣言を採択した第15回建築士事務所協会全国大会(兵庫大会)は、大会テーマに「村、町、都市づくりにロマンを」を掲げ、シンポジウム・テーマには「建築設計界の近未来と地域社会での役割」を選択しました。
 1,850余名のご参加のもと、大きな成果を上げ新たな時代への一歩となった兵庫会の足跡を記念・継承するとともに、シンポジウム・テーマを具現化する一環として建築士事務所の発展と建築士の地位の向上に資する「くすのき建築文化賞コンクール」賞を創設し、建築文化の発展と優秀な建築設計技術者の育成を図ることを目的に制度化して、翌年平成3年第19回通常総会において「くすのき建築文化賞」が制定されました。
 以来、隔年に開催を重ねて参り第16回の開催となります本年のコンクールにも14作品の応募に恵まれ、「くすのき建築文化賞コンクール選考委員会」において前回同様、川北健雄審査委員長はじめ計6名の審査委員の審査を経て優秀賞2作品、特別賞2作品が選ばれました。
 建築設計がまちづくりや建築文化の発展に貢献し、社会福祉の増進に寄与する役割において、一翼を担うことの重要性に対する社会の認識と理解が一層高まることを願いつつ、次回も更に多くの作品のご応募いただけますことを願い期待致しておりますのでなにとぞ宜しくお願い申し上げます。

(一社)兵庫県建築士事務所協会 会長 原田 敏文

受賞作品  受賞作品写真下の●(黒丸)をクリックするとその他の写真もご覧いただけます。

優秀賞

< 植村直己冒険館 どんぐりbase >

建築主名 豊岡市
所在地 兵庫県豊岡市
設計者名 北川・上田総合計画株式会社
北川 典義
協力会社:株式会社 中川工務店

優秀賞

< 六甲最高峰レストスペース >

建築主名 神戸市
所在地 兵庫県神戸市
設計者名 株式会社 ofa
小原 賢一、深川 礼子
有限会社 桃李舎
長谷川設備計画
株式会社 エスエフジーランド
スケープアーキテクツ

特別賞

< 奥池のセカンドハウス >

建築主名 神戸シッピング株式会社
田鍋 孝明
所在地 兵庫県芦屋市
設計者名 株式会社 y+M design office
三宅 正浩
小坂田雄介建築計画事務所
小坂田 雄介

特別賞

< 壌と家 >

建築主名 U様
所在地 兵庫県淡路市
設計者名 建築設計事務所SAI工房
斉藤 智士

撮影:山内 紀人

第16回くすのき建築文化賞コンクール 審査講評

くすのき建築文化賞コンクール選考委員会

審査委員長 神戸芸術工科大学 前教授 川北 健雄
審査委員 兵庫県まちづくり部建築指導課 課長
(公社)兵庫県建築士会 会長、(公社)日本建築家協会近畿支部兵庫地域会 地域会長
兵庫県建築設計監理協会 副会長、(一社)兵庫県建築士事務所協会 会長

 第16回くすのき建築文化賞コンクールには、作品部門に14点の応募があり、6名の審査委員による議論を通して、2点の優秀賞と2点の特別賞が選定された。
 優秀賞のひとつは、既存のミュージアムに併設された屋内遊具施設「植村直己冒険館どんぐりbase」。ガラスに囲まれた空間に五大陸の山々を象ったネット遊具が展開され、外部の地形との連続性や新たな体験性が、施設全体の魅力を高めている。
 もうひとつの優秀賞は、公衆トイレ・休憩スペースと園地が一体となった「六甲最高峰レストスペース」。山並みに呼応する屋根と斜面との間に、多様な居場所が生まれ、構造や環境面でも創意工夫が凝らされている。
 特別賞のひとつは、複数家族が同時利用できる別荘「奥池のセカンドハウス」。景観に配慮した外観と明快な構成のもと、プライバシーと開放感がバランスよく共存している。
 もうひとつの特別賞は、母屋に隣接する孫夫婦世帯の住まい「壌と家」。掘削と盛土によって地盤と応答関係を築き、中央の土間を軸に多様な空間が広がっている。
 いずれの作品にもランドスケープ的な思考がうかがえ、建築が環境と呼応しながら展開する未来に向けた可能性を感じさせる。