第15回 くすのき建築文化賞コンクール

くすのき文化賞ご挨拶

 正会員、賛助会員の皆様には平素より当協会の活動、事業に多大なご協力ご支援賜りまして心から感謝申し上げます。
 「くすのき建築文化賞」は平成2年に兵庫県にて開催された全国大会終了後に基金を蓄え、良い建築に対する一般社会の理解を高め、建物の社会的意義を発信し、建築の設計が街づくりにいかに大切であるかの啓蒙活動の一環として賞を設置し、若手建築家の育成のため優秀作品を表彰する目的のために隔年開催してまいりました。
 今年で15回目となりますが、前回に引き続き、審査委員長として神戸芸術工科大学環境デザイン学科川北健雄教授をお招きし、私をはじめ建築関係4団体の会長、地域会長、副会長の審査委員に、新たに兵庫県まちづくり部建築指導課吉田安弘課長に審査委員に加わっていただき、計6名の陣容で審査いたしました。
 一昨年は“新型コロナ禍”の影響もあり応募作品がわずか6作品に留まりました。
 その反省点から、今回のコンクールは2年前に立ち上げた兵庫県の建築4団体(事務所協会・建築士会・JIA兵庫地域会・設計監理協会)の“連携推進組織(アーキテットひょうご)”と共に、建築会にも協賛していただき、兵庫県の後援により開催し、応募者の枠を当会会員に限定せず他団体にも門戸を広げました。
 その結果27作品の応募があり作品のジャンルも多岐に渡りました。
 応募作品はいずれも力作でしたが、その中から厳正に審査し優秀賞2作品・特別賞2作品・佳作4作品、計8作品を表彰することといたしました。
 2年後の次回のコンクールも今回よりもさらに多くの意欲的な作品の応募を期待いたしておりますので、よろしくお願いいたします。

(一社)兵庫県建築士事務所協会 会長 柏本 保

受賞作品  受賞作品写真下の●(黒丸)をクリックするとその他の写真もご覧いただけます。

優秀賞

< かこてらす >

建築主名 加古川市
所在地 兵庫県加古川市
設計者名 株式会社小野設計

優秀賞

< 上郡町立認定こども園 >

建築主名 上郡町
所在地 兵庫県赤穂郡
設計者名 宮本佳明建築設計事務所
宮本 佳明

特別賞

< 武庫川女子大学 景観建築スタジオ西館 >

建築主名 学校法人武庫川学院
理事長 大河原 量
所在地 兵庫県西宮市
設計者名 武庫川女子大学建築・
都市デザインスタジオ
岡﨑 甚幸、猪股 圭佑、
森本 順子、鳥巣 茂樹、
山口 彩、田中 佑奈

特別賞

< pucapucaコミューン >

建築主名 公益財団法人
大谷教育文化振興財団
所在地 兵庫県丹波篠山市
設計者名 MuFF 今津 修平
クラウドアーキテクツ 川上 真誠
文化工学研究所 北川 浩明
MENT 姫治 恒太

佳作

< House with boulevard trees >

建築主名 E.R.キャピタル株式会社
代表取締役 早苗 博之
所在地 兵庫県芦屋市
設計者名 マニエラ建築設計事務所
大江 一夫

佳作

< hamachi apartment >

建築主名 社会福祉法人 友愛の里
所在地 兵庫県明石市
設計者名 anco.建築研究所
有住 卓

佳作

< 榛原郷の床と屋根 >

建築主名 O 様
所在地 兵庫県丹波篠山市
設計者名 建築設計事務所SAI工房
斉藤 智士

佳作

< 杜若寺納骨堂 >

建築主名 宗教法人 杜若寺
代表役員 西本 英尊
所在地 兵庫県尼崎市
設計者名 長谷川設計事務所
長谷川 総一、三宅 貴子

撮影:浅田 美浩

第15回くすのき建築文化賞コンクール 審査講評

くすのき建築文化賞コンクール選考委員会

審査委員長 神戸芸術工科大学 教授 川北 健雄
審査委員 兵庫県まちづくり部建築指導課 課長
(公社)兵庫県建築士会 会長、(公社)日本建築家協会近畿支部兵庫地域会 地域会長
兵庫県建築設計監理協会 副会長、(一社)兵庫県建築士事務所協会 会長

 第15回くすのき建築文化賞コンクールには、作品部門に27点の応募があり、6名の審査委員による議論を通して、2点の優秀賞、2点の特別賞、4点の佳作が選定された。

 優秀賞のひとつめは、公民館と子育てプラザの複合施設「かこてらす」である。ここでは、隣接する広場、ため池、消防署等を含む周辺環境との関係が重視され、建築と多様な人々の活動とが一体となって地域の魅力が育まれていくような場が、見事につくりだされている。2つめの優秀賞は、「上郡町立認定こども園」である。開放性とセキュリティの双方を風車状の園棟配置で実現し、室内空間から廊下や縁側、みんなの庭、そして園外へと、快適かつ安心できる環境下で子どもたちの活動がのびのびと展開される場が生まれている。

 特別賞のひとつめは、「武庫川女子大学景観建築スタジオ西館」である。キャンパス内の既存施設の意匠を受け止めながらも新たな表現が追求され、建築教育のための理想的な環境が形成されている。2つめの特別賞は、ランドスケープ一体型の休憩施設「pucapucaコミューン」である。壁で囲まれた物販スペースの上に、開放的な休憩スペースと草屋根を積み重ねることで、周辺の屋外活動を支えるシンボル性の高い場所が創出されている。

 佳作には、4点が選出された。「House with boulevard trees」では巧みに関係づけられた内外の空間、「hamachi apartment」ではシェアハウスとしての多様な共用スペース、「榛原郷の床と屋根」では周辺環境を受け止める大胆な空間構成、「杜若寺納骨堂」では景観的な配慮と印象深い空間のシークエンスが、それぞれの優れた点として特に高く評価された。

 惜しくも受賞に至らなかった応募作品の中にも、優れたアイデアと設計上の工夫を数多く見ることができ、審査委員一同、兵庫県下で建築が地域に深く根付いた文化として、今後も力強く育まれていくことに大きな期待を抱くことができた。